紺地花鳥図木瓜型花瓶

明治/太田良治郎

紺地花鳥図木瓜型花瓶

この作品は、わずか高さ15cm、胴径6cmほどの中に花や鳥の文様がたいへん細かく描かれており、これを作った職人の技術の高さに驚かされます。さらに注目すべきところは、この花瓶の形が単純な円筒形ではなく、かぼちゃのような凹凸があることです。このような形を上から見ると木瓜(もっこう)紋(もん)に似ていることから木瓜型(もっこうがた)といわれますが、この複雑な曲面の作品を作るためには植線という模様付けの工程だけでなく、素地づくり、釉薬差し、研磨と七宝づくりに関わるほとんどの工程に関わる職人の高い技術が必要とされます。

■ここがみどころ

作者の太田吉三郎の子孫は、現在でも七宝焼窯元として製作を続けています。
七宝工芸作家の太田吉亮(よしあき)氏が四代目で、第35回日展で七宝焼の立体造形で初めて特選に輝きました。二代目の良治郎氏は日展の前身である旧帝展工芸部唯一の七宝入選者で、三代目博明氏と続く代々日展作家として活躍しています。子孫の活躍へとつながる高い技術をこの作品に見ることができます。